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霊能者 [短編小説]

私は小さい頃から人の心の叫びが聞こえる

でも、真に迫った言葉しか聞こえない

成人して、結婚もし子供にも恵まれ幸せな「とき」を送っていた

ある日、私はケヤキ並木の美しい新緑を眩しく眺めながら整備された歩道を歩いていた

だんだん何かが近づいてくる気配

でも、何も見えない

でも、重苦しい心の叫びが聞こえる

「助けろよ!俺を助けろよ!お前には出来るだろう!」

一瞬、私の身体を何かが突き抜けた

いつか聞いた事のある叫び

ふと、道端の傍らに土埃にまみれた花束が置かれてあった

ここで誰かが亡くなったの?

あなたは誰?

また、強い風が私の身体を付きぬけ・・・

いや、身体の中で止まった

「オレはこんなところで供養なんてして欲しくなんかない静かなところに連れて行って欲しいんだ」

私の身体の中でその男は叫んでいた

私に何が出来るの・・・

私にどんな力があろうと、それをどのようにすれば

どのように使えば人の為、もしくは自分の為になるというのだろうか

「離れてよ!」私は声を出して叫んでいた。

心の中で男の涙が流れているかのように生暖かい風が抜けていった。

先ほどと変わらない美しい景色が戻った

人が亡くなって数日が過ぎると、もうその場にはいないんだよね

だから、その場所に花を添えないで

そんなところには、もういないんだから

地縛霊になっちゃうじゃないの・・・そんなことを考えながら

春の日差しを暖かく感じながら歩いていた

私に、特別な力はいらないよ

今、普通に幸せを感じているのだから

子供の頃は言えなかった

気がふれているようにしか思われないことは幼い私の心でも理解できた

神様はどうしてこんな力を私に

良くテレビなどで超能力者が出てくる

日本人も数人

その方たちが自分が霊能力者というのなら

今、行方不明の人たち

犯罪を犯して逃げている人たちを探し出せばいいのに

私には見える、あなたたち霊能力者だと言ってお金儲けをたくらんでいるのが・・・

道徳的なことを言っているだけなら許せるけれど

魂をもてあそばないで

あなたたちには霊能力なんてないじゃないの

私だけよ、力を持っているのは・・・

フフフ・・・

デビューしようかな?

私の名前は・・・

テレビでお会いしましょうか?

その時まで秘密です。

                続く・・・かも?

 

 


次の犠牲者 [短編小説]

私は同僚の自殺を知った
同じ部署にいて、常に一緒に仕事に取り組んでいた

商品開発の仕事を手がけていたが・・・
ある日彼の開発した新製品が
彼の上司の手柄になった

それから彼は仕事を休むようになっていた・・・

私は、一部始終を知っていたので
そんな会社に嫌気がさし
夫に辞めたいと告げた
なのに、夫は
「会社なんてそんなもんだ」
「今更その歳で仕事をやめたところで再就職は難しいぞ」
・・・と。
心の重圧に押しつぶされそうになりながら
無意味に働く自分がいて
何故、死ななければいけなかった同僚の
心の中を知りたくて・・・
そんな、私に夫は
「人の死がお前とどんな関係があるんだ、いい加減にしろ」
・・・と、一喝。
すれ違いの夫婦
せめて、家では癒されたいと思うのは
私だけなのでしょうか



楽しい事は楽しいと
悲しい事も共有し
励ましあって生きて行くのがパートナー
美味しいものを美味しいと
生きていくための手段の食べ物を 笑いながら美味しく頂けたら
働く意欲も沸いてくる

曲がりくねった心の行き先は別々の世界
価値観の相違
そんなつまらない人生を時の流れにゆだねて
最期を迎える

生きている意味が見出せないまま
終える人生・・・悲しいと思う

まず、相手の事を考える
「こんな風な言い方をしたら破滅かな?」・・・と、
考える事も出来なくなったパートナーは失格者だと思う!
私も。

私の人生において自由な人間としての人格を認めてもらえなかったと思う

そんな私はインターネットの楽しみを知った
特別心を許せる友達もいなかったし
働くだけの人生に光がともった。

でも、それさえも否定され・・・仕事優先?
お金に対する危機感?
仕事と主婦だけをやればいい・・・そんな感じの押し付け

綺麗な洋服も、贅沢な持ち物も・・・
この歳になって・・・
美味しい贅沢な食べ物もテレビの中だけの世界
そんなテレビ番組でさえつまらないとチャンネルを変えられて
見ることもままならず・・・

私は、玩具じゃない
私は、ペットじゃない
私は、働くロボットじゃない
私は、私だって好きなことをしたい
私は、 独りになりたい・・・矛盾


矛盾と
悲しみと
淋しさと
辛さと
憎しみと

思い出と
懐かしさと
憧れと
喜びと

いろんな思いが心の中に渦巻いて
耐えられくなったら
どこか遠くに逃げてもいいよね

今、・・・そんな心に溺れそうになっている
助けてくれるものは誰一人いない
深い世界に押しこんでくれる人は・・・
すぐそこにいるのに

他人の自殺は・・・他人事ではない
そのときの気持ちは?
どんな風に?
怖くなかったの?
最期の時を迎えるまでどんな生活をしていたの?
美味しいものを食べた?・・・我慢した?
心残りは?
死ぬ直前、やはり、生きたいと思わなかった?
満足?

もし、私がそんな「時」をむかえるときがきたら
少しだけ勇気をください。
生きている自分より死んでしまう自分の方が幸せと感じたら
私もそのときは旅立とうと思います。

関係のない人の死を甘く見ないで
知らない人の死ならバカなヤツだったと思えても・・・
言葉を交わした人の死は
やはり・・・悲しい。

人が死ぬたびに
人生を考えてしまいます。
ただ、今だけを生きている人には関係のない話でしょうか?
今さえよければいいの?
将来は?
どうなるの?
私の運命を握り締めないで
自分の思い通りにしようと思わないで
私を自分の殻の中に閉じ込めないで
自分の人生は自分で切り開いて行きたい
そう思う。


私は、ひとり
私の周りには誰もいない
他人がいるだけ
他人だらけ・・・。

生への決別?
違う!
生きていくための・・・

きっと、私は生きていく
自堕落でも生きていく

今日も私は暗い心を引きずりながら会社に向かう

そんな私に、彼を自殺に追いやった上司から、
商品開発の仕事を任された

第二の犠牲者?

 

                    完


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