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殺しはしないけれど・・・ [短編小説]

私は夫の書斎の奥にある小さな冷蔵庫を開けた事が無い。
そこには夫の好きなお酒が入っているはず。
夫は書斎にこもると最低2時間はそこにあるパソコンと向かい合って
仕事をしているようだった。
熟年といわれる歳になると夫婦と言えども殆ど会話の無い毎日が過ぎていく
言い方を換えれば、何も言わずとも心が通じている、とでも言うのだろうか。

私はお酒を飲まないので夫がどんな酒を好んで飲んでいるかなんて興味もないし
お酒を買って補充をするということもしない。

ある日の土曜日、書斎の掃除をしていたら、冷蔵庫のドァから何かが、はみ出しているのが見えた。
開けてみると小さなケーキの箱が
夫はケーキなど食べないし、ましてお酒のつまみなどにするわけも無い。
だからといって聞かない私も変なのだけれど
次の日ゴルフに出かけるという夫を見送ったあと
あの、冷蔵庫を開けてみた。
小さなケーキの箱はなくなっていた。

以来、私は、夫の冷蔵庫の中が気になり覗くようになっていた。
土曜日になると上等なお菓子が入っていて
日曜日、夫が出かけた後に見るとなくなっている。
こうなると夫の浮気を認めないわけにはいかない
見たことも無い女に無駄な嫉妬はバカらしい
しかし、私を欺く夫は許せない

私は、土曜の夜、夫がお風呂に入ると
冷蔵庫の中の菓子やケーキに洗剤を少しだけしみこませた。
時には自分の尿をこすりつけて置いた。
相手の女が汚れたものを口にする
殺す気は無いけれど・・・これは復讐だと。

きっと、女は少し味が変でも男の持ってきたものを食べないわけは無いだろうと
もはや、これは、憎しみと言うよりは私にとってはゲームだ。

私は今日も夫の冷蔵庫を覗く

「フフ・・・今日は何が入っているのかな?」


                                 完



あとがき

なにやら一気に書いてしまった
年末、冷蔵庫のお掃除をしていてヒントにしましたが
お正月らしくない、気味の悪い内容になってしまったかな?
ごめんなさいっ!

                                 秋乃 桜子 2009年元旦

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コメント 6

アガタ・リョウ

小説の類は、殆ど読まない男ですが、女性の側から見た考え・想いで書かれていますから、私にはひどく新鮮に見えます。男と女の違いは、唄の文句ではありませんが、<男と女の間には、深くて遠い川がある。人の渡れぬ川なれど、今日も一人櫂を漕ぐ、ローアンドロー、振り返るなよ>かも知れませんね。1/1投稿分に、長い長い初恋物語を基軸に、時代・男と云う生き物を描いて見ました。小説手法としては、書き手は神の様な存在で、登場人物の外面・内面を冷静?に、客観的?に書き表そうとしています。私は、人の内面など、知り得ようもないと達観視してしまいますから、私の打つ物は、一人称の自分の側だけに留めてしまいます。書く、打つと云う事は、一人作業です。一人を見つめた方が、インパクト、個人の面白さが光るのかも知れません。男の発想・文章に無い女の部分が、ストレートに伝わって来て、大いに参考と為りました。私の様な男は、間違い無く女房に殺されますね。困った事に為りそうです。遺憾いかん・・・
by アガタ・リョウ (2009-01-02 19:25) 

sakurako

黒の舟唄ですか?
懐かしい曲です、いろいろな方が思いを込めて歌っていますよね

私も小説は昔のように・・・と言うか今は読む暇もないし、読みませんが。
なのに、ふと思いつくと何にも考えず一気に書いてしまう。

あまり言葉も知らないから心のままに
女性側の見る目というのも、あるのかも知れませんが
この短文たちは
私流、未完成なものたちです。
それに、コメントをいただけるなんて、嬉しくって小躍りしてしまいました。
同居人はあきれておりましたが。

短編は登場人物を最小限に
神が見たように書くな・・・と、同居人に言われていましたが
アガタ・リョウ さまの言われるように
登場人物の外面・内面を冷静に、客観的に描けるという利もありますよね
私は作家ではないのだから好きなように書く
でも、公開している以上は文責が生じてくる。
言葉って、難しい・・・

アガタ・リョウ さまは、殺されませんよ~ぉ
だって、何でもできる男性って、今の時代貴重です。
一応、絶賛のつもりなんです・・・。
ほんと、今の男達は何にも出来ない・・・
アガタ・リョウ さまは、すばらしい方です。
ありがとうございました。
by sakurako (2009-01-03 10:47) 

hirotto

おおうぅ。
ゲ、ゲームっていうのが何かリアルでした。
最近はゲーム感覚で犯罪やら何やら多いですもんね。
あー、こわ。
正月早々飛ばしてますね♪
by hirotto (2009-01-05 22:24) 

sakurako

hirottoさ~ん!

オットット星人にも言われましたが
リアルだと・・・言われました。
でも、・・・殺しはしないから・・・うふふふ・・・・

書き物と言えども
考えて書いた私は
恐ろしい女だったり?

お正月らしくないお話でごめんなさい
桜っち、優しいおなごですよ~ぉ。
by sakurako (2009-01-07 21:37) 

ウエチナ

こういう話も私 好きなんです☆
夫に対する奥さんの愛情というか思いやりが
伝わってきました。
そして奥さんの美意識というかお洒落な
生き方に強さを感じました。

そして最後の一行も最高です!!
夫の妻に対する愛情にジ~ンときちゃいました。


P.S. 秋乃さんの小説、ナイスです☆
時間がある時に少しずつ読まさせて頂いています(^o^)丿

「霊能者」「次の犠牲者」も好きです!!

by ウエチナ (2010-03-10 02:51) 

ウエチナ

ごめんなさい!
このコメントは「私の妻は天使」の方への
コメントでした(^_^;)

本当に申し訳ありませんでした<m(__)m>



by ウエチナ (2010-03-10 02:56) 

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