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メモリアルダイアモンド [大人の童話]

「故人のご遺骨から炭素を抽出し精製、メモリアルダイアモンドに・・・」
 私はインターネットネットで見つけた記事を読んでいた。骨の一部か、あるいは遺骨の全部で人工ダイアが作れると言う。全部の骨を使うと墓の心配もなくなる。妻は、まもなく天使になる。何もしてやれない悲しさと悔しさの中で、どんな風に愛する妻を私の元に残そうかと考えていた矢先のこと。探してみると仙台にも取次店があった。
  たった2人の生活から独りぼっちになる寂しさ、反面、入院生活が長かったせ いか、妻を早く楽にしてやりたいとも思っていた。 心の中で早く天使になることを願う矛盾、そんな心の不安定な中、数ヵ月後、 妻は本当に天使になった。 ひっそりと家族だけの葬式を終えた。不思議と涙は出なかった
 しばらくして、私はダイアモンドのことを思 い出した。
 高価ではあったが死亡保険金の一部で支払いを済ませた。
 それから半年、妻の骨の全部が人工ダイアになって戻ってきた。 手に乗せるとキラット優しい光りを放った。私は小さくなった妻を、いつも懐に入れていた。 不思議なことにその輝きは毎日変化した。 そのうち私はそれが妻からのメッセージだと確信した。私が嬉しい時はピンク色に光り、私が悲しみに沈んでいると水色に光った。腹が立つ時はダイアも赤く光った。 「お前は私といつも一緒で、同じように感動して生きているんだね。」
数年が過ぎ、縁あって初婚の女性と再婚することになった。 何もいらないと言う彼女に、悪気はなかったが、あの人工ダイアで指輪を作り贈った。
「わあ!綺麗な真紅の石だわね」 彼女の言葉に、私は心臓が止まりそうになった。
 妻の骨で作った人工ダイアが、再婚相手の細い薬指にはまり、真っ赤な血の色に染まって怪しく輝き続けていたから。

ダイア120.jpg

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3.11 [短編]

地球は病んでいる
日本?・・・                                                                              
│Japan  │128,056,0│127,767,│288,032│0.2  │100.0│343  │51,951,51│             
   
│Iwate-ke│00001  │1,385,04│-54,511│      │1.0  │87   │471  │            
│n      │       │1     │      │      │     │     │       │            
│Miyagi-k│00000  │2,360,21│-12,243│-0.5  │1.8  │322  │901,254│            
│en     │       │8     │      │      │     │     │       │            
│Akita-ke│00000  │1,145,50│-59,623│-5.2  │0.8  │93   │390,335│            
│n      │       │1     │         │     │       │            
│Yamagata│00000  │1,216,18│-47,392│-3.9  │0.9  │125  │388,670│            
│-ken   │       │1    

地球の上の小さな島
日本が危ない・・・

面積377.914水面積率0.8パーセント×#■#ё・・・人口128056026
建国紀元前660年2月11日ISO3166-JP/JPN △$  ・j
aaaaaaaaasssssssstttttttttnnnnnn  ////

データが壊れている

・・・
建国2.11
地殻変動3.11
2回目地殻変動4.11
その後の余震、数千回か・・・

おりしも6.11私は時空を超えて地球に向かった
母船に12機の小型船を積んだ

10.2月10日 拡大.jpg 

日本、東北の一部は小雨
暗い闇に包まれた半島の一部からは
今もなお魂の叫びが聞こえてくる 
あんなちっぽけな人間たちが頑張って東北を
日本を、地球を救おうとしている
無駄な抵抗のような気がするが
これは何かの原動力になるのは間違いないだろう
少し様子を見てみるか・・・
地球人が頑張れるようならば
もう少しこの地球の存続を考えないこともないな・・・

しかし・・・地球は美しいなぁ~

1102月5日 夕日.jpg

人間の心も、この星に見合った美しさがあるのだろうか
我らと同じ運命を辿ってほしくないな
器の中で生活している我らにとっては憧れの星だ
こんなきれいな地球を永遠に残しておきたいな

時間を越えて50年後の地球に会いに行ってみるか?
いや、やめておこう

しばらく地球の監視を強化しよう

                                         完

 

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 [大人の童話]

「 ねえ、あなた起きて、ここはどこ?」

「いいから、こっちにおいで」

「こんなところにお線香がある」

「そうか・・・」
                                     
 部屋は薄暗く窓は障子戸だった。天井にはシミが浮き出ていて、部屋の暗さとシミの模様が恐ろしい獣のように見える。壁は白塗りでところどころが剥げ落ちて、ただ掃除はされているようだ。

 「ねえ、このお線香たて気味が悪い」

「死んだ、わたしたちのために村人が置いてくれたんだよ。寒いか?早く布団にお入り」

「・・・わたしたち死んだの? ねえ!あなたぁお布団くっつけていい?」
「うん、いいよ」

ここは東北の山の中、冬は道路が封鎖されて、なかなか容易に人の踏み込むところではない。寒くて凍えそうな寒さの中で二人は寝具に包まった。窓の外は世界を覆い隠すような勢いで雪が降りそそいでいる。

「ねえ~寒いね」

「ごめんなぁ寒いか?」

「うん、手つないでいい?」

男達が新しい線香を持ってきた 。

「この仏さんたち、なにもこんな雪深い山の中まで来て死ななくてもいいのによぉ」

「 まったく迷惑だよな。無理心中だって言うしさぁ男の方は肺がんの末期で女の方は、マダラボケだったらしいし」

「この雪じゃあしばらくこの仏様たちはこのままだべな~」

「お・おい!お前、仏さんをいじったか?」

「ば・ばか言え!そんなことするわけねえ」

「だって見ろよ布団はくっついているし手が・・・」

 

「ねえ、人の声がするよ。うるさいね・・・あなたの手冷たいね。あなた 寝たの?私も眠い・・・絶対に手、離さないでね・・・」


 [大人の童話]

お仕事を終えて、いつもの食堂で遅いランチ
所定のお気に入りの場所に席を取る
私の好きな絵がかけられているその場所は
疲れた身体を癒やしてくれる
絵の中の女性が私に微笑んでいるようで・・・

私には気になることがあった
いつも座る席の向い側
中年の男性が決まった時間に訪れ
ひとつ向い側のテーブルに
向かい合うように腰をおろす
見た目には普通の会社員風
混んでいない時間だと普通なら背中を向けて座る
あたりを見回すと皆一方に向いて食べている
その男性だけは私のほうを向いて・・・
それが・・・2週間以上続いている
彼のお気に入りの席?
私と同じ時間に現れる・・・

今日の私は違う
彼が席に着いたとたん
私はトレーを持って席を移動した
心なしか男性の顔が曇ったような気がした


そんなことがあって
その後、男は二度と私の前には現れなかった

・・・40年後
私は職場結婚をしてすぐ退職
2人の子供にも恵まれ孫も出来
幸せな家庭生活を送っていた

そんな私を病魔が襲った
私は病院のベッドの中で半年も苦痛と戦っていた・・・
病院から見る景色は冷たいビルの壁だけ
でも、夕暮れになるとグレーの壁に映る夕日が美しくて
それだけが私の慰め


痛み止めの注射が効いたのか
幻覚なのか・・・不思議な夢を見た
40年前の
記憶にもないはずのあの場面

夢の中の男は・・・
紛れもなく今の夫の姿だった

夫が見舞いに来た
夢の話をしたら 
「お前が死んだら?お前の元気だった頃の姿、絶対、見に行くよ」
夫は笑っていた
そうか・・・あの時、40年前、
やっぱり、あなたは私に会いに来てくれたんだ・・・
あなただって分かっていたら・・・もっと、優しく出来たのに

「あなた・・・私が死んだら必ず若い頃の私に会いに来てね」
夫は微笑んでうなずいた

今度・・・
あの「男」に会ったら、こう言おうと思う
「ご一緒のデーブルでランチして良いですか」
あなたはきっと微笑んでうなずいてくれるよね

                         完


霊能者 [短編小説]

私は小さい頃から人の心の叫びが聞こえる

でも、真に迫った言葉しか聞こえない

成人して、結婚もし子供にも恵まれ幸せな「とき」を送っていた

ある日、私はケヤキ並木の美しい新緑を眩しく眺めながら整備された歩道を歩いていた

だんだん何かが近づいてくる気配

でも、何も見えない

でも、重苦しい心の叫びが聞こえる

「助けろよ!俺を助けろよ!お前には出来るだろう!」

一瞬、私の身体を何かが突き抜けた

いつか聞いた事のある叫び

ふと、道端の傍らに土埃にまみれた花束が置かれてあった

ここで誰かが亡くなったの?

あなたは誰?

また、強い風が私の身体を付きぬけ・・・

いや、身体の中で止まった

「オレはこんなところで供養なんてして欲しくなんかない静かなところに連れて行って欲しいんだ」

私の身体の中でその男は叫んでいた

私に何が出来るの・・・

私にどんな力があろうと、それをどのようにすれば

どのように使えば人の為、もしくは自分の為になるというのだろうか

「離れてよ!」私は声を出して叫んでいた。

心の中で男の涙が流れているかのように生暖かい風が抜けていった。

先ほどと変わらない美しい景色が戻った

人が亡くなって数日が過ぎると、もうその場にはいないんだよね

だから、その場所に花を添えないで

そんなところには、もういないんだから

地縛霊になっちゃうじゃないの・・・そんなことを考えながら

春の日差しを暖かく感じながら歩いていた

私に、特別な力はいらないよ

今、普通に幸せを感じているのだから

子供の頃は言えなかった

気がふれているようにしか思われないことは幼い私の心でも理解できた

神様はどうしてこんな力を私に

良くテレビなどで超能力者が出てくる

日本人も数人

その方たちが自分が霊能力者というのなら

今、行方不明の人たち

犯罪を犯して逃げている人たちを探し出せばいいのに

私には見える、あなたたち霊能力者だと言ってお金儲けをたくらんでいるのが・・・

道徳的なことを言っているだけなら許せるけれど

魂をもてあそばないで

あなたたちには霊能力なんてないじゃないの

私だけよ、力を持っているのは・・・

フフフ・・・

デビューしようかな?

私の名前は・・・

テレビでお会いしましょうか?

その時まで秘密です。

                続く・・・かも?

 

 


次の犠牲者 [短編小説]

私は同僚の自殺を知った
同じ部署にいて、常に一緒に仕事に取り組んでいた

商品開発の仕事を手がけていたが・・・
ある日彼の開発した新製品が
彼の上司の手柄になった

それから彼は仕事を休むようになっていた・・・

私は、一部始終を知っていたので
そんな会社に嫌気がさし
夫に辞めたいと告げた
なのに、夫は
「会社なんてそんなもんだ」
「今更その歳で仕事をやめたところで再就職は難しいぞ」
・・・と。
心の重圧に押しつぶされそうになりながら
無意味に働く自分がいて
何故、死ななければいけなかった同僚の
心の中を知りたくて・・・
そんな、私に夫は
「人の死がお前とどんな関係があるんだ、いい加減にしろ」
・・・と、一喝。
すれ違いの夫婦
せめて、家では癒されたいと思うのは
私だけなのでしょうか



楽しい事は楽しいと
悲しい事も共有し
励ましあって生きて行くのがパートナー
美味しいものを美味しいと
生きていくための手段の食べ物を 笑いながら美味しく頂けたら
働く意欲も沸いてくる

曲がりくねった心の行き先は別々の世界
価値観の相違
そんなつまらない人生を時の流れにゆだねて
最期を迎える

生きている意味が見出せないまま
終える人生・・・悲しいと思う

まず、相手の事を考える
「こんな風な言い方をしたら破滅かな?」・・・と、
考える事も出来なくなったパートナーは失格者だと思う!
私も。

私の人生において自由な人間としての人格を認めてもらえなかったと思う

そんな私はインターネットの楽しみを知った
特別心を許せる友達もいなかったし
働くだけの人生に光がともった。

でも、それさえも否定され・・・仕事優先?
お金に対する危機感?
仕事と主婦だけをやればいい・・・そんな感じの押し付け

綺麗な洋服も、贅沢な持ち物も・・・
この歳になって・・・
美味しい贅沢な食べ物もテレビの中だけの世界
そんなテレビ番組でさえつまらないとチャンネルを変えられて
見ることもままならず・・・

私は、玩具じゃない
私は、ペットじゃない
私は、働くロボットじゃない
私は、私だって好きなことをしたい
私は、 独りになりたい・・・矛盾


矛盾と
悲しみと
淋しさと
辛さと
憎しみと

思い出と
懐かしさと
憧れと
喜びと

いろんな思いが心の中に渦巻いて
耐えられくなったら
どこか遠くに逃げてもいいよね

今、・・・そんな心に溺れそうになっている
助けてくれるものは誰一人いない
深い世界に押しこんでくれる人は・・・
すぐそこにいるのに

他人の自殺は・・・他人事ではない
そのときの気持ちは?
どんな風に?
怖くなかったの?
最期の時を迎えるまでどんな生活をしていたの?
美味しいものを食べた?・・・我慢した?
心残りは?
死ぬ直前、やはり、生きたいと思わなかった?
満足?

もし、私がそんな「時」をむかえるときがきたら
少しだけ勇気をください。
生きている自分より死んでしまう自分の方が幸せと感じたら
私もそのときは旅立とうと思います。

関係のない人の死を甘く見ないで
知らない人の死ならバカなヤツだったと思えても・・・
言葉を交わした人の死は
やはり・・・悲しい。

人が死ぬたびに
人生を考えてしまいます。
ただ、今だけを生きている人には関係のない話でしょうか?
今さえよければいいの?
将来は?
どうなるの?
私の運命を握り締めないで
自分の思い通りにしようと思わないで
私を自分の殻の中に閉じ込めないで
自分の人生は自分で切り開いて行きたい
そう思う。


私は、ひとり
私の周りには誰もいない
他人がいるだけ
他人だらけ・・・。

生への決別?
違う!
生きていくための・・・

きっと、私は生きていく
自堕落でも生きていく

今日も私は暗い心を引きずりながら会社に向かう

そんな私に、彼を自殺に追いやった上司から、
商品開発の仕事を任された

第二の犠牲者?

 

                    完


殺しはしないけれど・・・ [短編小説]

私は夫の書斎の奥にある小さな冷蔵庫を開けた事が無い。
そこには夫の好きなお酒が入っているはず。
夫は書斎にこもると最低2時間はそこにあるパソコンと向かい合って
仕事をしているようだった。
熟年といわれる歳になると夫婦と言えども殆ど会話の無い毎日が過ぎていく
言い方を換えれば、何も言わずとも心が通じている、とでも言うのだろうか。

私はお酒を飲まないので夫がどんな酒を好んで飲んでいるかなんて興味もないし
お酒を買って補充をするということもしない。

ある日の土曜日、書斎の掃除をしていたら、冷蔵庫のドァから何かが、はみ出しているのが見えた。
開けてみると小さなケーキの箱が
夫はケーキなど食べないし、ましてお酒のつまみなどにするわけも無い。
だからといって聞かない私も変なのだけれど
次の日ゴルフに出かけるという夫を見送ったあと
あの、冷蔵庫を開けてみた。
小さなケーキの箱はなくなっていた。

以来、私は、夫の冷蔵庫の中が気になり覗くようになっていた。
土曜日になると上等なお菓子が入っていて
日曜日、夫が出かけた後に見るとなくなっている。
こうなると夫の浮気を認めないわけにはいかない
見たことも無い女に無駄な嫉妬はバカらしい
しかし、私を欺く夫は許せない

私は、土曜の夜、夫がお風呂に入ると
冷蔵庫の中の菓子やケーキに洗剤を少しだけしみこませた。
時には自分の尿をこすりつけて置いた。
相手の女が汚れたものを口にする
殺す気は無いけれど・・・これは復讐だと。

きっと、女は少し味が変でも男の持ってきたものを食べないわけは無いだろうと
もはや、これは、憎しみと言うよりは私にとってはゲームだ。

私は今日も夫の冷蔵庫を覗く

「フフ・・・今日は何が入っているのかな?」


                                 完



あとがき

なにやら一気に書いてしまった
年末、冷蔵庫のお掃除をしていてヒントにしましたが
お正月らしくない、気味の悪い内容になってしまったかな?
ごめんなさいっ!

                                 秋乃 桜子 2009年元旦

私の妻は天使 [大人の童話]

私の妻は身勝手で
気が強くて
悲しいぐらい身体が弱くて
いつも私に心配をかける
悪妻・・・いや、本当は天使だった。

働き者で・・・だから気が強くなくては生きていけなかったのだと思う。

仕事が休みの午後
「ねえ~ぇフレンチ食べに行かない?」
「・・・フレンチ?」
「うん!フランス料理だよぉ」

私はそんなものを、ちまちま食べるよりも
テーブルいっぱいに並んだご馳走を食べる方がいいと思っていた。

でも、仕方が無いので妻と連れ立って小奇麗なフランス料理店に入った。
コース料理は結婚式等でしか知らなかったから
料理を選ぶのも大変だったので金額で選んだ。

テーブルに綺麗に並べられたナイフとフォーク
真っ白いナプキン

「それ、ひざにかけるのよ、赤ちゃんじゃないからヨダレかけみたいに掛けないで・・・」
「そんなこと知ってるわい!」
来た事も無いくせに、堂々としている妻

スープが運ばれてきて
前菜
次に魚料理


「ねえ~・・・ナイフとフォークが多すぎだよ、どれかな?これ?」
妻は魚料理にナイフをあてた
でも、違うと感じた妻は
「このナイフとっかえて!」
「・・・なんで」
「私が間違えて使ったと思われるもん」
「・・だって、間違えたのはお前だよ」
「・・・いいのっ!文句ある?」
強引な妻は自分が間違えて使ったナイフを私のと取り替えた。

お口直しの料理が運ばれてきた

ウエイターが間違えたナイフをスマートな手つきで取り替えていく

メインの肉料理
デザート
ホット珈琲

始めはグラスビールで乾杯
次は白ワイン
途中で赤ワイン
とどめの珈琲で日本食が好きな私の腹の中はごたごたになった。
帰り道、妻はよほど嬉しかったのだろう
あの料理はどうのこうの
カウンター越しに時々姿を見せるコック帽の白さに感激したり
久々にはしゃぐ妻を見たような気がした。
しかし食事に大金を使ったのはこれが初めてである。

妻が身体の不調を訴え始めた頃のことだった。


「ね~ぇ、あなたの着るものはこの中に・・・季節ごと入れ替えるの面倒だから全部、タンスに入れたからね」
「ふ~ん」
私はどうでもいいような返事をしていた。
今になって思えばタンスの引き出しの妻の衣類が減っていた事に何故気付かなかったのだろう。

ある日いつもの様に勤めに出た妻の会社から、私の職場に電話が入った。
妻が倒れて病院にいるということ・・・
急いで駆けつけると妻はニコニコしながら病院のソファーに座っていた。
「御免、ちょっとめまいがしただけ、2・3日仕事休めば大丈夫だから・・・」
そのときも私は、妻の笑顔に騙されていた。

妻はまた、仕事に出るようになった。
何事も無いように時は流れていった。

「おっ!」
「なあに?」
「最近、痩せた?」
「・・・うん!ダイェットしてるの」
「ダイェットなんか止めろよ、老けて見えるぞ」
「・・・そお?」
妻が淋しそうな顔をしたような気がした。


「なに?それ」
「これ?胃薬」
「胃が悪いのか?」
「うん、少しね」

フランス料理を食べに行ってから2ヵ月後
妻は救急車で運ばれて
そうして、私の側から消えた
「キスをして」・・・と病院のベッドの中でつぶやいてからまもなく
妻は天使になった。

今でも分からない
妻はどうして自分の病気を隠していたのか
どうしてきちんと治療を受けなかったのか
残された私は、この疑問と死ぬまで向かい合っていかなければいけないのか

独り残された私の日常が始まった
「お~い靴下は?」
「シャツは?」

妻の返事が無い
妻がいなくなってから、初めて妻のタンスを開けてみた
涙が出た
あんなにあった下着や衣類が殆どなくなったいた。
空っぽ状態の妻のタンス。
自分がこの世から消えてしまった後の私のことを考えてくれていたんだね
きっと、そうなのだと。

以前から妻は言っていた
「自分が死ぬときは・・・トランク1個の状態にしたいな・・・忘れたけれど有名な?女優さんも言ってたし・・・」


私は妻と行ったフランス料理店に行った

あの時と同じものを注文した
グラスワインを2つ頼んだら若いウエイターが
不思議がらずにニコニコと、私のテーブルにグラスを並べた。

「お前もここにいるんだね?乾杯しょうか?」



                               完






あとがき

年末に調子を悪くして
ベッドの中で考えた内容です。
夫には「また~ぁ・・・」と言われそう
人が死んだり・・・内容が、お正月らしくない?
明るい何か・・・書けないかしらねぇ・・・

最後まで読んでくださってありがとうございました。
もっと、勉強します。
                 
                         秋乃 桜子

愛犬 [心の中の言葉たち]

「おかあたん泣かないで・・・」

               秋乃 桜子


「今から行って来るねっ!待っていてね」

おかあたんは優しく、あたちの頭をなでて部屋から出て行った。
毎朝の光景だったけれど・・・
でも、今日は、いつもより優しかったね

「でも、おかあたん・・・あたち、もう、おかあたんに会えないと思う・・・」

あたち、生後2ヶ月でおとうたんと、おかあたんの家に来ました。
小さくて最初におとうたんの大きな手のぬくもりを感じました。
次に、おかあたんの小さな・・・
う~ん・・・おとうたんに負けないぐらい大きな手で
あたちを手の中に・・・暖かかったよ。

家には大きなお兄ちゃんと、小さなお兄ちゃんがいて、
何か興味深気にあたちを覗き込んでいたっけ・・・
大きなお兄ちゃんはあたちがイタズラすると怒る、ちょっと怖い存在。
小さなお兄ちゃんはあたちを玩具にするから少しうるさい存在。
おかあたんは、ご飯をくれるし、おとうたんは夜抱っこして寝てくれる。
そのうち、あたちは犬である事を忘れてしまったの。


おとうたんがお店でお仕事をしている音がするよ
おかたんは、今頃お外でお仕事だね?
あと何時間?おかあたんが戻るのはまだまださきだね・・・
・・・やっぱり、会えそうもないよ、おかあた~ん・・・


おとうたんとおかあたんは、お休みになると遠いところに連れて行ってくれたね
車に長い間乗っているのは辛かったけれど
お家で留守番は嫌だったから・・・嬉しかったよ。
キャンプもしたよね?
あたちがいると、色々な所に行けないけれど・・・それもまた、楽しいって、
人ごみは怖かったけれど、いつも、おかあたんが戻るまで独りだったから
お出かけは嫌いじゃなかったよ。
お散歩も好きじゃなかったけれど、おとうたんと、おかあたんの間に挟まりながら
顔を見ながら歩くのは大好きだった、時々踏んづけられそうになったりしたけれど。

あ! 踏んづけられるといえば、冬のコタツの中
あたちは「頭が煮えるぞ ~!」と、おとうたんに怒られてもコタツから出なかった。
そのうち、おとうたんは、あたちの嫌いな 嫌いなお酒を飲み始める
で、そうだ・・・あたち、コタツの中で蹴飛ばされて・・・
ビックリしておとうたんの足をがぶり・・・痛かった?
あたち、おとうたんの機嫌取り一生懸命したよね・・・
覚えている?

おかあたんは、まだ帰ってこない・・・

あたち、少し眠ったみたい
お水が飲みたいなぁ・・・
でも、そこまで歩けないの・・・

少し苦しくなってきたのでおとうたんを呼んだ
少し悲鳴に近かったかな?
バタバタと階段を駆け上がってきた
「キャンデイどうした?」
「苦しいのか?」
あたちの身体は痙攣が止まらなかった。
「もう少し待ってろな病院に連れて行くからな」
おとうたんは 病院に電話をしているみたいだった
舌打ちする・・・おとうたん
「待ってろなぁ今昼休みで先生がいないから少しだけ待ってろな~ぁ・・・」
あたちの身体を優しくなでてくれた。
お店に、お客さんがきたみたい・・・階段をバタバタ下りていった。

独りは怖いよ、淋しいよ、おとうたん、おかあたん・・・。
あたちを独りにしないで・・・


おかあたんは、お仕事がお休みのときはいつも一緒で楽しかったよ。
機嫌がいいと音楽を聴きながらお掃除をしていたよね
時にはダンスをしながら、あたちが一緒になって踊るとおかあたんも喜んで
いつまでも踊り続けたよね
あたちは、尻尾をふりふりおかあたんの周りをぐるぐる回る
知っていた?あたちだって可笑しい時、楽しいときは笑うんだよ・・・

あたちの怒るときの顔はわかるよね?少し生意気な顔をしていたでしょう?
可愛い?歯をむき出しにしたり、口元にシワを寄せたり・・・
だって、この家の子は男の子ばかりで、あたちは女の子、少し我がままなんですぅ。

あたちの名前、2個あるんだよね?
何やら血統証なるものにはアモーラル オブ ミサオ パーク ジエイピー
長くて可愛くない名前だからって、おかあたんが付けてくれたんだよね?
キャンディって!
男の子だったらクッキーにするつもりだったんですって?
食いしん坊のおかあたん・・・らしいね。

ウフ・・・あたちは、ミニチュァのロングヘァーのダックスフンド。
小さいときはロングの毛がモップみたい・・・って、おとうたんが笑っていた。

お散歩のときは道路のお掃除をしているって・・・

春は雪解けでどろどろになって、夏は草の実、秋は枯葉や木屑
冬はあまりお外に出なかったけれど・・・
冷たい雪があたちのロングの毛にくっついてそのうち氷になったっけ・・・

あ!川の中に入れられた事もあるよね?
生まれてはじめての経験だったよ。
泳ぎなんてした事ないのに、いきなりだもん・・・
おとうたんったら~スパルタだったよね?
でも、少しだったけれど上手に泳げたでしょう?
でも、おかあたん怒っていたよね
溺れたらどうするのぉ!・・・って。
おとうたんは・・・笑っていたね?
犬かきで、泳いだって・・・


おかあた~ん!まだ帰って来ないのかな・・・


おとうたん、お仕事なのに一生懸命、階段を駆け上がってくる。
「大丈夫か?待ってろな、頑張れ!もうすぐ連れていってやるからな・・・」
何度も何度も、あたちの様子を見に来てくれる。
おとうたん、ごめんね・・・

あたち、おとうたんと、おかあたんの足音わかるよ
車の音もわかるよ
あたちがお留守番をしているとき
家の前でサイドブレーキを引く音でわかっちゃうんだもん
すごいでしょう?
お家に入ってくる前にあたち、ワンワン吼えるでしょう?
お帰りなさい、淋しかったよ・・・って、言っていたんだよ。


おとうたん、苦しいよ・・・助けて・・・
震えがまた・・・
痙攣も・・・
あたち・・・大きな声で、おとうたんを呼んだの

あ・・おかあたんの車の音がする ・・・
おかあたんの泣き声?・・・
おかあたん!泣きながら車の運転は危ないよ・・・
スピード出さないで・・・
もう無理しないで・・・もう泣かないで
あたち、もう苦しくないよ・・・
おとうたんが優しく撫でてくれているから・・・
間に合わないけれど、あたちは・・・おかあたんがわかるの
近くまで来ている・・・おかあたんが見えるから・・・
おかあたん、ごめんね
おとうたん、ありがとう
おとうたんも・・・泣かないでね。

あたち、もう頑張らなくてもいいよね?


                             完

                                  
 

あとがき

桜子ちゃんの愛犬キャンディは2年前の10月31日に遠い世界に旅立ちました
そのときの事を思い出すと・・・今でも涙が止まりません。
困ったものです・・・。                       
16年もの長い時間を共にした愛する命でした。
・・・余りにも悲しい別れでした。
もう・・・動物を飼う気にはなれません・・・。
最期、ひと目会いたかったです。
      

獣の叫び [短編小説]

獣の叫び


                   秋乃 桜子


「私は、森が嫌いだ。
暗闇で吼える獣の声は・・・
私を幼い頃の不安な気持ちに連れ戻そうとするから・・・」


京子の母、三津子は昔ながらの女だった。
夫にも口答えせず、気持ちをひとり心の奥に閉じ込めておくタイプの女だった。
そんな母親を見ていた京子は、男に対して,ある不信感を抱いていた。
母は普段は着物を着ていることが多かった。
京子の友達のお母さん達はエプロン姿で活発に見えたが、母は古風な女に見えた。
外に働きにでる事も許されず、
ただ一人娘の京子のためにだけ生きてきたような、
そんな女だった。

ある日、そんな母を気遣って、実家から、急いで実家に戻れと言う電話が。
母はバタバタと身支度をして夜行列車に乗り込んだ。
実は何事もなく京子の祖母は娘、三津子に会いたいばかりに、嘘をついたのであった。

残された当時小学生の京子は、
明日は泊まりの出張という父について行くために学校を休んだ。


翌朝、ジープに揺られて車酔いをしながら京子は山の奥深くまで入っていった・・・
乗り物に弱い京子にとって嫌になるほどの長い時間に感じた。
父から仁丹を貰い口に含みながら・・・。
仁丹は辛かったが、口の中で溶けていく間は車酔いを少しだけ遠ざけてくれるような気がした。
砂利道が続き、着いたところは何もない山小屋のようなところ、
近くには小川が流れ、小鳥のさえずりが、都会の喧騒など聞こえもしない。
・・・そんな、世界が広がっていた。
土木関係の仕事をしていた京子の父は、
山に出張と言う度に、この事務所には何度も足を運んでいたらしい。


特別な挨拶もなく家に戻ったように京子の父はその建物に入っていく。
「せっちゃん、娘を頼むね!」
親しげに、他人の女性と会話を交わす父を見るのは初めてだった。
家では寡黙で、笑い顔など見たこともなく、母には厳しい父であったから・・・。
まして、せっちやん・・・?

昼近く、父は、後から来た作業員たちと出かけていった。
残された京子は、その・・・せっちゃんと2人っきり、
せっちゃんはこの事務所の若い賄いさんらしかった。
仕事があるときだけ山の、この事務所に入るらしい。
父のいない間、京子に気を使ってくれたのだろう、
川に誘ってくれたりしたが・・・京子は部屋の中から動かなかった。
たった、1台の古びたラジオから途切れ途切れに聞こえる音に、
京子は必死に聞き耳を立てた。

仕事から戻った父は、この山小屋のような事務所に泊まる事になっていたらしい。
夕飯は、父とせっちゃんという若い女性と3人きり、
外は星さえ見えない木立に埋もれる山の中の事務所。
せっちゃんの作ってくれた夕食は質素ではあったけれど、
母の作ってくれたそれより・・・美味しかった。
「美味しいだろ~ぅ!?」と言う父の笑顔。
初めてみたような気がした。
母の手料理で、こんな事は今までなかったから。
始終ご機嫌な父。

森は夜が早い。
京子は広い畳の部屋に夜具をしいてもらった。
父と同じ部屋に寝る事は記憶にないくらいの昔だったと思う。
小さい頃から自分の部屋で寝ていた京子は布団が二つ並べられているのを見たときは
妙に不自然で不思議な感じがした。

京子は月の明かりも見えない部屋の中が怖かった。
それでも、いつの間にか眠りの世界へと吸い込まれていった。

ふと、物音で目が覚めた京子は奇妙な声を聞いた
獣の叫び?・・・生ぬるい叫びが続いた。
怖くなった京子は、隣に寝ているであろう父の姿を探した。
暗くて何も見えない。
こんなに近くなのに
声をかけて返事がなかったらどうしょう・・・京子は一人震えていた。
声など出せなかった。
起こしたら怒られそうな気がしたから・・・。
目を大きく見開き隣の父を何度も見たが
父の姿は確認できなかった。
一筋の光も漏れてこない暗闇の恐怖を初めて知った。
そのうちまた、眠りに落ちていった。

翌朝、父も、せっちゃんも機嫌が良かった。
二人の機嫌の良さと、お天気が京子の昨夜の出来事を忘れさせてくれた。
次の日、京子は優しいせっちゃんと、川遊びをした。
楽しかった記憶。


数年が過ぎ、その、せっちゃんは父のところに結婚の挨拶に来た。
隣には優しそうな男性が・・・。
なのにせっちゃんは、泣いていた。
「ありがとうございました。お世話になりました・・・」
そのときのそばにいた母、三津子の顔を京子は記憶していない。


大人になった京子は
ふと思い出した・・・。
あの森の中のうめき声は・・・
父と若い娘の・・・

自分が異性を意識し、
子供の頃聞いたあの森の中の暗闇の部屋で聞いた正体がようやく分かった頃・・・父はもういなかった。
独り残された母は父の裏切りも・・・多分知らずに今日のこの日まで来たのだろうと。
それとも母への父の裏切りは、ただの京子の思い込みなのだろうか・・・。


昨夜、京子は、恋人と決別を決めた。
2年もの間、半同棲生活をしていた。
その男に裏切られ、死にたいほど傷付いたの京子は
父と女と、、翔太と女と、今までの愛と憎しみと、ありったけの気持ちをぶちまけた。
短い言葉で、
「もしもし翔太、私、あなたの車の中で死ぬわよ!」

翔太が書いている小説の中の女のように・・・
翔太の携帯に電話をした。
裏切られた京子の情けないほどのささやかな復讐・・・
言葉だけの復讐、
こんな男の為に死ねる訳がない。
いや、まだ未練が心の中で渦巻いていたのだった。
電話をしながら、涙と笑いが止め処もなく京子の口から漏れていった。


ノックの音がした

「京子?京子いるの?」
しばらく振りで母の声を聞いた。
「おかあさ~ん!」
涙が止まらなかった
「どうしたの京子、大丈夫?」
泣きながら京子は答えた
「うん!・・・お母さんの作った美味しいご飯が食べたいの!」
「何がいいの?どうしたの?」
「お母さんの作るものなら何でもいいよ~ぉ!」
涙声が笑い声に変わっていく瞬間であった。

                        

                        完


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